あの日みていたもの 苔むす樹木の傍で 小さき子を抱きし母 陰にたたずむ かすかな風の只中で 片足こぼし 指くわえし子 ひかりが洗う幹をみつめる 母は子に頬寄せ 微笑んで ゆるめた言葉 風に溶かしてふれさせる かすかな風の只中で 言葉を知らぬ子の みている景色を知らぬ母 ふたりを洗うひとつのひかり